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経口薬【アトピー性皮膚炎の治療】

経口JAK阻害薬では、ウパダシチニブ、バリシチニブ、アブロシチニブがアトピー性皮膚炎の治療薬として使用できるようになり、重症の患者さんにも治療が届きやすくなりました。時にシクロスポリンを用いることもありますが、長期間の使用で血圧上昇や腎臓への負担がかかりますので短期間の使用が望ましいです。ウパダシチニブ(商品名:リンヴォック)ウパダシチニブはJAK1を阻害する薬剤です。通常は15mg錠を1日1回1錠、毎日服用しますが、患者さんの状態によっては7.5mgへの減量が可能です。アトピー性皮膚炎に限って倍量の30mgを処方することができます。ウパダシチニブの薬価7.5mg:2594.6円/錠15mg:5089.2円/錠30mg:7351.8円/錠バリシチニブ(商品名:オルミエント)バリシチニブはJAK1/JAK2を阻害する薬剤で、皮膚科領域ではアトピー性皮膚炎と円形脱毛症(ただし、脱毛部位が広範囲に及ぶ難治の場合限定)に適応があります。用量は4mgを1日1回経口投与する。状態に応じ適宜減量となっています。相互作用がありますので、プロベネシドを内服している患者さんは減量が望ましいとされています。バリシチニブの薬価2mg:2705.9円/錠4mg:5274.9円/錠アブロシチニブ(商品名:サイバインコ)アブロシチニブはウパダシチニブと同じくJAK1を阻害する薬剤です。50mg、100mg、200mgの3剤形があり、通常用量の100mgから増やしたり減らしたりできます。状況に応じて柔軟な処方ができるのは利点です。適応はアトピー性皮膚炎のみになります。アブロシチニブの薬価50mg:2587.4円/錠100mg:5044円/錠200mg:7566.1円/錠〔アトピー性皮膚炎でのJAK阻害薬処方の注意点〕診療ガイドラインでは、次のように定められています。JAK阻害薬の内服は、「事前に十分な外用薬などの治療を行っていても難治であった方」が対象となります。今まで何もやっていない方であれば6ヵ月程度はガイドラインに沿った外用薬による治療を行い、それでも改善しない場合に使用します。投与の要否にあたっては、以下に該当する患者であることを確認する必要があります。(1)アトピー性皮膚炎診療ガイドラインを参考に、アトピー性皮膚炎の確定診断がなされている。(2)抗炎症外用薬による治療では十分な効果が得られず、一定以上の疾患活動性を有する、または、ステロイド外用薬やカルシニューリン阻害外用薬に対する過敏症、顕著な局所性副作用もしくは全身性副作用により、これらの抗炎症外用薬のみによる治療の継続が困難で、一定以上の疾患活動性を有する成人アトピー性皮膚炎患者である。a)アトピー性皮膚炎診療ガイドラインで、重症度に応じて推奨されるステロイド外用薬(ストロングクラス以上)やカルシニューリン阻害外用薬による適切な治療を直近の6ヵ月以上行っている。b)以下のいずれにも該当する状態。IGAスコア3以上EASIスコア16以上、または顔面の広範囲に強い炎症を伴う皮疹を有する(目安として頭頸部のEASIスコアが2.4以上)体表面積に占めるアトピー性皮膚炎病変の割合が10%以上同時に、投与できる施設も決められております。次に掲げる医師要件のうち、本製剤に関する治療の責任者として配置されている者が該当する施設です。ア)医師免許取得後2年の初期研修を終了した後に、5年以上の皮膚科診療の臨床研修を行っていること。イ)医師免許取得後2年の初期研修を終了した後に6年以上の臨床経験を有していること。うち、3年以上は、アトピー性皮膚炎を含むアレルギー診療の臨床研修を行っていること。また、日本皮膚科学会でも届出制度を作っています。乾癬の生物学的製剤のように承認制度は設けていませんが、薬剤の特性上、下記の要件を満たした上で届出した上で、使用することになっています。1)皮膚科専門医が常勤していること2)乾癬生物学的製剤安全対策講習会の受講履歴があること3)薬剤の導入および維持において近隣の施設に必要な検査をお願いできること

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皮膚疾患へのJAK阻害薬、心血管リスクを増加させず

 無作為化比較試験35件の皮膚疾患患者2万例超を対象としたメタ解析において、JAK阻害薬の使用はプラセボ/実薬対照と比較して、主要心血管イベント(MACE)および全死亡、静脈血栓塞栓症(VTE)のリスク増加と関連しなかった。米国・New York University Grossman School of MedicineのJenne P. Ingrassia氏らが報告した。JAK阻害薬は、アトピー性皮膚炎、円形脱毛症などの皮膚疾患に対する有効な治療選択肢であるが、米国食品医薬品局(FDA)が経口・外用JAK阻害薬について、MACE、VTE、重篤な感染症、悪性新生物、死亡のリスク増加に関する枠囲み警告(boxed warning)を付している。しかし、この枠囲み警告は関節リウマチ患者を対象とした「Oral Rheumatoid Arthritis Trial(ORAL)Surveillance試験」の結果に基づくもので、皮膚疾患患者で同様の関連が観察されるかは明らかになっていなかった。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年11月1日号掲載の報告。 研究グループは、皮膚疾患患者におけるJAK阻害薬とMACE、全死亡、VTEの関連を評価するシステマティック・レビューおよびメタ解析を実施した。 データベース開始日~2023年4月1日の期間にPubMed、ClinicalTrials.govに登録された研究を検索し、皮膚疾患に対してJAK阻害薬を用いた第III相無作為化比較試験を抽出した。JAK阻害薬はFDA承認または承認申請中、あるいはEUや日本で承認されている薬剤とした。対照群の設定されていない試験、ケースレポート、観察研究、レビューに関する論文は除外した。 システマティック・レビューおよびメタ解析は、PRISMAガイドラインに則って実施した。有害事象はランダム効果モデルとDerSimonian-Laird法を用いてオッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を算出して評価した。2人の独立した著者によりデータの抽出と質的評価が行われた。 主要アウトカムは、MACEおよび全死亡の複合、VTEであった。 主な結果は以下のとおり。・システマティック・レビューおよびメタ解析は、無作為化比較試験35件とその参加者2万651例を対象とした。・対象患者の平均年齢(標準偏差[SD])は38.5(10.1)歳、男性は54%であった。・平均追跡期間(SD)は、4.9(2.68)ヵ月であった。・MACEおよび全死亡の複合(OR:0.83、95%CI:0.44~1.57)、VTE(同:0.52、0.26~1.04)について、JAK阻害薬とプラセボ/実薬対照に有意差は認められなかった。

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11月23日 AGAスキンクリニック ふさふさの日【今日は何の日?】

【11月23日 ふさふさの日】〔由来〕毛が元気に立っているイメージの「11」と、多くの髪の毛を連想させる「フサフサ(23)」と読む語呂合わせでAGAスキンクリニックが制定。薄毛は治療できる時代になったということを多くの人に知ってもらうことが目的。関連コンテンツ12歳から使用可能な経口の円形脱毛症治療薬「リットフーロカプセル50mg」【下平博士のDIノート】「AGA(男性型脱毛症)」【診療よろず相談TV】円形脱毛症の母親の出生児が抱えるリスクとは?中等症~重症円形脱毛症、ritlecitinibで改善/Lancet脱毛治療での栄養サプリ使用は、安全・有効か?

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12歳から使用可能な経口の円形脱毛症治療薬「リットフーロカプセル50mg」【下平博士のDIノート】第127回

12歳から使用可能な経口の円形脱毛症治療薬「リットフーロカプセル50mg」今回は、JAK3/TECファミリーキナーゼ阻害薬「リトレシチニブ(商品名:リットフーロカプセル50mg、製造販売元:ファイザー)」を紹介します。本剤は、12歳以上の小児から使用できる円形脱毛症治療の経口薬であり、広い患者におけるQOL向上が期待されます。<効能・効果>円形脱毛症(ただし、脱毛部位が広範囲に及ぶ難治の場合に限る)の適応で、2023年6月26日に製造販売承認を取得しました。本剤投与開始時に、頭部全体のおおむね50%以上に脱毛が認められ、過去6ヵ月程度毛髪に自然再生が認められない患者に投与します。<用法・用量>通常、成人および12歳以上の小児には、リトレシチニブとして50mgを1日1回経口投与しますなお、本剤による治療反応は、通常投与開始から48週までには得られるため、48週までに治療反応が得られない場合は投与中止を考慮します。<安全性>1%以上に認められた臨床検査値異常を含む副作用として、悪心、下痢、腹痛、疲労、気道感染、咽頭炎、毛包炎、尿路感染、頭痛、ざ瘡、蕁麻疹が報告されています。なお、重大な副作用として、感染症(帯状疱疹[0.9%]、口腔ヘルペス[0.8%]、単純ヘルペス[0.5%]、COVID-19[0.2%]、敗血症[0.1%]など)、リンパ球減少(1.6%)、血小板減少(0.3%)、ヘモグロビン減少(0.2%)、好中球減少(0.2%)、静脈血栓塞栓症(頻度不明)、肝機能障害(ALT上昇[0.9%]、AST上昇[0.5%])、出血(鼻出血[0.5%]、尿中血陽性[0.1%]、挫傷[0.1%]など)が設定されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、脱毛の原因となる免疫関連の酵素の働きを抑えることで、円形脱毛症の症状を改善します。2.免疫を抑える作用があるため、発熱、寒気、体のだるさ、咳の継続などの一般的な感染症症状のほか、帯状疱疹や単純ヘルペスなどの症状に注意し、気になる症状が現れた場合は速やかにご相談ください。3.本剤を使用している間は、生ワクチン(BCG、麻疹・風疹混合/単独、水痘、おたふく風邪など)の接種ができないので、接種の必要がある場合は医師にご相談ください。4.妊婦または妊娠している可能性がある人はこの薬を使用することはできません。妊娠する可能性のある人は、この薬を使用している間および使用終了後1ヵ月間は、適切な避妊を行ってください。5.ふくらはぎの色の変化、痛み、腫れ、息苦しさなどの症状が現れた場合は、すぐに医師にご連絡ください。<Shimo's eyes>円形脱毛症は、ストレスや疲労、感染症などをきっかけとして、自己の免疫細胞が毛包を攻撃することで脱毛症状が起こる疾患です。急性期と症状固定期(脱毛症状が約半年超)に分けられ、急性期で脱毛斑が単発または少数の場合には発症後1年以内の回復が期待できます。一方、急性期後に自然再生が認められず、脱毛症状が継続する重症の円形脱毛症では回復率は低いとされ、診療ガイドラインには局所免疫療法や紫外線療法などの治療が記載されていますが、より簡便で効果的な治療法が求められていました。本剤は、JAK3および5種類のTECファミリーキナーゼを不可逆的に阻害する共有結合形成型の経口投与可能な低分子製剤です。円形脱毛症の病態に関与するIL-15、IL-21などの共通γ鎖受容体のシグナル伝達をJAK3阻害により強力に抑制し、CD8陽性T細胞およびNK細胞の細胞溶解能をTECファミリーキナーゼ阻害により抑制することで治療効果を発揮します。全頭型および汎発型を含む円形脱毛症を有する患者を対象とした国際共同治験(ALLEGRO-2b/3、ALLEGRO-LT)で、本剤投与群は、24週時のSALT≦20(頭部脱毛が20%以下)達成割合はプラセボと比較して統計的に有意な改善を示しました。なお、円形脱毛症に使用する経口JAK阻害薬として、すでにバリシチニブ(商品名:オルミエント)が2022年6月に適応追加になっています。バリシチニブは15歳以上が対象ですが、本剤は12歳以上の小児でも使用可能です。本剤はほかのJAK阻害薬と同様に、活動性結核、妊娠中、血球減少は禁忌となっています。また、感染症の発症、帯状疱疹やB型肝炎ウイルスの再活性化の懸念もあるため、症状の発現が認められた場合にはすぐに受診するよう患者さんに説明しましょう。円形脱毛症は、多くの場合は頭皮で脱毛しますが、ときには眉毛、まつ毛を含む頭部全体や全身に症状が出ることでQOLが著しく低下する疾患です。ストレスが多い現代社会で、ニーズの高い医薬品と言えます。

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円形脱毛症の母親の出生児が抱えるリスクとは?

 韓国・延世大学校のJu Yeong Lee氏らが実施した後ろ向き出生コホート研究において、円形脱毛症(AA)を有する母親から出生した児は、AAに関連する併存疾患リスクが高いことが示された。母親のAAと児の自己免疫疾患や炎症性疾患、アトピー性疾患、甲状腺機能低下症、精神疾患の発症に関連がみられ、著者は「臨床医や保護者は、これらの疾患が発生する可能性を認識しておく必要がある」と述べている。AAは自己免疫疾患や精神疾患と関連することが知られているが、AAを有する母親の児に関する長期アウトカムの調査は不足していた。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年5月24日号掲載の報告。 研究グループは、韓国の全国健康保険サービス(Nationwide Health Insurance Service)のデータベースと、出生登録データベースを用いて後ろ向き出生コホート研究を実施した。 対象は、2003~15年にAA(ICD-10コードL63に基づく)を診断名として3回以上受診した母親から出生したすべての児6万7,364例(AA群)と、AAと診断されていない母親から出生した児(対照群)67万3,640例であった(1対10の割合で、出生年、性別、保険の種類、所得レベル、居住地をマッチング)。 対象児について出生から2020年12月31日まで追跡し、自己免疫疾患、炎症性疾患、アレルギー性疾患、甲状腺疾患、精神疾患の発症※と母親のAAとの関連について、多変量Cox比例ハザードモデルを用いて評価した(共変量:出生年、年齢、保険の種類、所得レベル、居住地、母親の年齢、分娩形態、母親のアトピー性皮膚炎の既往歴、自己免疫疾患の既往歴)。解析は、2022年7月~2023年1月に行った。※:AA、全頭型脱毛症/汎発型脱毛症(AT/AU)、白斑、乾癬、炎症性腸疾患(IBD)、関節リウマチ(RA)、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、喘息、甲状腺機能亢進症、甲状腺機能低下症、バセドウ病、橋本病、注意欠如・多動症(ADHD)、気分障害、不安症の発症。 主な結果は以下のとおり。・AA群は対照群と比較して、以下の発症リスクが有意に高かった。 -AA(調整ハザード比[aHR]:2.08、95%信頼区間[CI]:1.88~2.30) -AT/AU(同:1.57、1.18~2.08) -白斑(同:1.47、1.32~1.63) -アトピー性疾患(同:1.07、1.06~1.09) -甲状腺機能低下症(同:1.14、1.03~1.25) -精神疾患(同:1.15、1.11~1.20)・AA群のうち、AT/AUを有する母親から生まれた児5,088例は、AT/AU(aHR:2.98、95%CI:1.48~6.00)および精神疾患(同:1.27、1.12~1.44)の発症リスクが高かった。

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中等症~重症円形脱毛症、ritlecitinibで改善/Lancet

 経口ヤヌスキナーゼ(JAK)3/TECファミリーキナーゼ阻害薬ritlecitinibは、12歳以上の円形脱毛症患者に有効で忍容性も良好であることを、米国・イェール大学のBrett King氏らが、日本を含む18ヵ国118施設で行われた第IIb/III相無作為化二重盲検プラセボ対照用量設定試験「ALLEGRO-2b/3試験」の結果、報告した。円形脱毛症は、頭皮、顔または体毛の非瘢痕性脱毛を特徴とするT細胞を介した自己免疫疾患である。これまで円形脱毛症に対する治療法はほとんどなかったが、JAK1/JAK2阻害薬バリシチニブが、2022年6月に米国および欧州で成人の円形脱毛症の治療薬として初めて承認された。しかし、バリシチニブの臨床試験には18歳未満の若年者が含まれていなかったため、円形脱毛症治療のアンメットニーズが残されたままであった。Lancet誌オンライン版2023年4月13日号掲載の報告。12歳以上の中等症~重症円形脱毛症718例を7群に無作為化 研究グループは、脱毛症重症度評価ツール(Severity of Alopecia Tool[SALT]範囲:0[脱毛なし]~100[全頭脱毛])で測定した頭部脱毛が50%以上の、中等症~重症円形脱毛症と診断された12歳以上の患者を、ritlecitinib 200mg1日1回4週間負荷投与後50mg1日1回投与群(200mg+50mg群)、200mgを4週間負荷投与後30mg投与群(200mg+30mg群)、50mg群、30mg群、10mg群、プラセボ24週間投与後延長期にritlecitinib 200mgを4週間負荷投与後50mg投与(プラセボ→200mg+50mg群)、またはプラセボ24週間投与後延長期にritlecitinib 50mg投与群(プラセボ→50mg群)に、2対2対2対2対1対1対1の割合にベースラインの疾患重症度と年齢で層別化して無作為化に割り付けた。 主要エンドポイントは、24週時におけるSALTスコア20以下(頭部脱毛が20%以下)に基づく奏効率である。 2018年12月3日~2021年6月24日の期間に、1,097例がスクリーニングされ、適格基準を満たした718例が200mg+50mg群(132例)、200mg+30mg群(130例)、50mg群(130例)、30mg群(132例)、10mg群(63例)、プラセボ→50mg群(66例)、プラセボ→200mg+50mg群(65例)に割り付けられた。奏効(頭部脱毛が20%以下)を得られた患者は200mg+50mg群で31% 718例の患者背景は、女性446例(62%)、男性272例(38%)、白人488例(68%)、アジア人186例(26%)、黒人またはアフリカ系アメリカ人27例(4%)であった。718例中104例が治療を中止した(脱落34例、有害事象19例、医師の判断12例、無効12例、追跡調査不能13例、長期投与試験へ移行5例、妊娠4例、プロトコル逸脱2例、COVID-19による追跡調査拒否1例、COVID-19による最終診察遅延1例、服薬順守違反1例)。 24週時の奏効率は、200mg+50mg群31%(38/124例)、200mg+30mg群22%(27/121例)、50mg群23%(29/124例)、30mg群14%(17/119例)、プラセボ群2%(2/130例)であり、奏効率のプラセボ群との差は200mg+50mg群で29.1%(95%信頼区間[CI]:21.2~37.9、p<0.0001)、200mg+30mg群で20.8%(13.7~29.2、p<0.0001)、50mg群で21.9%(14.7~30.2、p<0.0001)、30mg群で12.8%(6.7~20.4、p<0.0002)であった。 延長期間を含めた48週間における有害事象の発現率は、200mg+50mg群82%(108/131例)、200mg+30mg群81%(105/129例)、50mg群85%(110/130例)、30mg群80%(106/132例)、10mg群76%(47/62例)、プラセボ→200mg+50mg群83%(54/65例)、プラセボ→50mg群86%(57/66例)で、各群において同程度であった。死亡例は報告されなかった。

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重度の円形脱毛症、MTX+低用量ステロイドで毛髪再生

 フランス・ルーアン大学病院およびフランス国立衛生医学研究所(INSERM)U1234のPascal Joly氏らは、円形脱毛症(AA)のうち重度とされる全頭型AAまたは汎発型AA患者を対象に、メトトレキサート(MTX)単剤とプラセボの比較、MTX単剤とMTX+低用量prednisoneの併用療法を比較する2段階の二重盲検無作為化比較試験を実施した。その結果、MTX単剤では主に部分的発毛が可能であったが、MTX+低用量prednisone併用療法は患者の最大31%で完全発毛が可能であった。著者らは、「これらの結果は、JAK阻害薬で最近報告された結果と同程度であるが、コストははるかに安価と考えられる」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年3月8日号掲載の報告。 研究グループは、治療効果が低いと報告されているAAの中でも最も重度とされる全頭型AAと汎発型AAについて、安価な治療法であるMTX単剤とMTX+低用量prednisoneの併用療法の有効性と忍容性を検討した。 試験は、8つの大学病院の皮膚科部門で2014年3月~2016年12月の期間に行われた。対象は、6ヵ月超の局所および全身性の治療にもかかわらず症状進行が認められる全頭型AAまたは汎発型AA成人患者。 対象患者は第1段階として、MTX(25g/週)単剤群またはプラセボ群に1:1の割合で無作為に割り付けられた。6ヵ月時点の評価で25%以上の発毛が認められた患者は、12ヵ月間後まで1段階目で割り付けられた治療を継続した。発毛が25%未満であった患者は、第2段階としてMTX+prednisone(20mg/日を3ヵ月と15mg/日を3ヵ月)併用群またはMTX単剤群(MTX+プラセボ)に無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、MTX単剤の開始から12ヵ月後の完全発毛またはほぼ完全発毛(Severity of Alopecia Tool[SALT]スコア10未満)であった。なお、主要エンドポイントの評価は、試験開始時からMTXが投与された患者に限定され、4人の国際的な専門家が写真を基に評価した。副次エンドポイントは、頭皮の50%を超える発毛、QOL、忍容性などであった。データ解析は、2018年10月~2019年6月に行われた。 主な結果は以下のとおり。・合計89例(女性50例、男性39例、平均年齢±標準偏差:38.6±14.3歳、全頭型AA:1例、汎発型AA:88例)が、MTX単剤群(45例)またはプラセボ群(44例)に無作為に割り付けられた。・12ヵ月時点で、完全またはほぼ完全発毛が観察されたのは、MTX単剤群1例、プラセボ群0例であった。MTX(6または12ヵ月)+prednisone併用群では35例中7例(20.0%、95%信頼区間[CI]:8.4~37.0)で観察され、このうちMTX(12ヵ月)+prednisone(6ヵ月)併用群では16例中5例(31.2%、95%CI:11.0~58.7)で観察された。・完全またはほぼ完全発毛が観察された患者は非反応患者と比べて、QOLの改善が認められた。・MTX投与を受けた患者において、疲労が7例(6.9%)、悪心が14例(13.7%)に認められ、2例が疲労と悪心で試験を中断した。重度の治療関連有害事象は観察されなかった。

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SLEへのバリシチニブ、第III相SLE-BRAVE-I試験の結果/Lancet

 オーストラリア・モナシュ大学のEric F. Morand氏らは、活動性全身性エリテマトーデス(SLE)患者を対象としたバリシチニブの無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験「SLE-BRAVE-I試験」の結果、主要エンドポイントは達成されたものの、主要な副次エンドポイントは達成されなかったことを報告した。ヤヌスキナーゼ(JAK)1/JAK2の選択的阻害薬であるバリシチニブは、関節リウマチ、アトピー性皮膚炎および円形脱毛症の治療薬として承認されている。SLE患者を対象にした24週間の第II相試験では、バリシチニブ4mgはプラセボと比較して、SLEの疾患活動性を有意に改善することが示されていた。Lancet誌オンライン版2023年2月24日号掲載の報告。SLE患者760例をバリシチニブ4mg群、2mg群、プラセボ群に無作為化 SLE-BRAVE-I試験は、アジア、欧州、北米、中米、南米の18ヵ国182施設で実施された。 研究グループは、スクリーニングの24週間以上前にSLEと診断され、標準治療を行うも疾患活動性が認められる18歳以上の患者を、バリシチニブ4mg群、バリシチニブ2mg群またはプラセボ群に1対1対1の割合で無作為に割り付け、標準治療との併用で52週間1日1回投与した。グルココルチコイドの漸減が推奨されたが、プロトコールで必須ではなかった。 主要エンドポイントは、52週時のSLE Responder Index-4(SRI-4)レスポンダーの割合で、ベースラインの疾患活動性、コルチコステロイド量、地域および治療群をモデルに組み込んだロジスティック回帰分析により、バリシチニブ4mg群とプラセボ群を比較した。 有効性解析対象集団は修正intention-to-treat(ITT)集団(無作為化され少なくとも1回治験薬の投与を受けたすべての患者)、安全性解析対象集団は無作為化され少なくとも1回治験薬を投与され、ベースライン後の最初の診察時に追跡調査不能の理由で試験を中止しなかったすべての患者とした。 760例が無作為に割り付けられ、修正ITT集団はバリシチニブ4mg群252例、バリシチニブ2mg群255例、プラセボ群253例であった。52週時のSRI-4レスポンダー率はバリシチニブ4mg群57%、プラセボ群46% 52週時のSRI-4レスポンダー率は、バリシチニブ4mg群57%(142/252例)、プラセボ群46%(116/253例)であり、オッズ比(OR)1.57(95%信頼区間[CI]:1.09~2.27)、群間差10.8(95%CI:2.0~19.6)で有意差が認められた(p=0.016)。バリシチニブ2mg群は50%(126/255例)で、プラセボ群との有意差はなかった(OR:1.14[95%CI:0.79~1.65]、群間差:3.9[95%CI:-4.9~12.6]、p=0.47)。 初回の重度SLE flareが発現するまでの時間やグルココルチコイド漸減など主要副次エンドポイントに関しては、バリシチニブ群のいずれにおいてもプラセボ群と比較して有意差は認められなかった。 重篤な有害事象は、バリシチニブ4mg群で26例(10%)、バリシチニブ2mg群で24例(9%)、プラセボ群で18例(7%)に発現した。SLE患者におけるバリシチニブの安全性プロファイルは、既知の安全性プロファイルと一致していた。

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11月23日 ふさふさの日【今日は何の日?】

【11月23日 ふさふさの日】〔由来〕毛が元気に立っているイメージの「11」と、多くの髪の毛を連想させる「フサフサ(23)」と読む語呂合わせでAGAスキンクリニックが制定。薄毛は治療できる時代になったということを多くの人に知ってもらうことが目的。関連コンテンツ円形脱毛症【患者説明用スライド】抜け毛を気にしているのは女性に多い/アイスタットバリシチニブ、円形脱毛症の毛髪再生に有効か/NEJM円形脱毛症リスク、地毛の色で有意差予後予測に優れた円形脱毛症評価ツールを開発

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円形脱毛症の経口治療薬を米FDAが承認

 米食品医薬品局(FDA)は6月13日、重症の円形脱毛症の成人に対する経口治療薬として、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬の一種であるバリシチニブ(商品名オルミエント)を承認したことを発表した。円形脱毛症に対する、局所ではなく全身性の治療薬としては、同薬剤が初めての承認である。 円形脱毛症は、体が自身の毛包を誤って攻撃してしまうことで生じる脱毛を特徴とする自己免疫疾患である。JAK阻害薬のバリシチニブは、炎症性サイトカインの細胞内でのシグナル伝達に関わる酵素であるヤヌスキナーゼの働きを阻害することで炎症を抑制する。 バリシチニブの安全性と有効性は、6カ月以上にわたって頭皮の50%以上の脱毛が見られる円形脱毛症患者を対象にした、2件のプラセボ対照二重盲検化ランダム化比較試験(Trial AA-1、Trial AA-2)の結果を基に確認された。試験参加者は、バリシチニブ(2mg/日、または4mg/日)、またはプラセボを投与する群にランダムに割り付けられた。主要評価項目は両試験とも、36週間後に毛髪による頭皮の被覆率80%以上を達成した患者の割合とした。 その結果、主要評価項目を達成した患者は、Trial AA-1ではバリシチニブ2mg/日投与群(184人)の22%、4mg/日投与群(281人)の35%、Trial AA-2ではバリシチニブ2mg/日投与群(156人)の17%、4mg/日投与群(234人)の32%であったのに対し、プラセボ群ではTrial AA-1(189人)で5%、Trial AA-2(156人)で3%にとどまっていた。 バリシチニブの最も一般的な副作用は、上気道感染症、頭痛、ざ瘡(にきび)、脂質異常症、血中クレアチンホスホキナーゼ増加、尿路感染症、肝酵素値上昇、毛包の炎症、倦怠感、下気道感染症、悪心、カンジダ症、貧血、好中球減少症、腹痛、帯状疱疹、および体重増加である。 バリシチニブは、他のJAK阻害薬や免疫調整生物製剤、シクロスポリンなどの強力な免疫抑制剤と併用することはできない。また、警告や注意事項として、重篤な感染症、死亡、悪性腫瘍、主要心血管イベント、血栓症などが生じる可能性のあること、同薬剤による治療中および治療後の感染症の兆候や症状を綿密にモニタリングするべきこと、治療前の活動性結核の症状の評価と潜在性結核感染症の有無を確認する必要があること、さらに、ウイルスの再活性化の兆候についても精査する必要があることなどが述べられている。 FDA医薬品評価研究センター(CDER)の皮膚科歯科部門でディレクターを務めるKendall Marcus氏は、「安全で効果的な治療選択肢へのアクセスは、重症の円形脱毛症に悩まされている多数の米国人にとって極めて重要だ。今回の承認は、重症の円形脱毛症患者が抱えるアンメットニーズを満たすのに役立つだろう」と話している。 なお、バリシチニブの承認は、イーライリリー・アンド・カンパニーに対して与えられた。

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米国小児の円形脱毛症有病率は0.11%

 米国で電子健康記録データを用いた小児円形脱毛症(AA)の有病率と罹患率を調べた結果、2009~20年の有病率は0.11%、罹患率は10万人年当たり13.6例であることが明らかにされた。米国・フィラデルフィア小児病院のPaige L. McKenzie氏らによるコホート研究の結果で、「有病率は過去10年間で2倍になっていた。また、AAの診断を受ける可能性が2~3倍高いリスクを有する人口統計学的サブグループとして、アジア系およびヒスパニックの子供が特定された」と述べている。JAMA Dermatology誌オンライン版2022年4月6日号掲載の報告。 研究グループは、米国の小児集団における小児AAの有病率および罹患率を時間経過、性別、年齢、人種/民族、地理的領域別に調べるため、5つの小児病院の協力を得て多施設共同コホート研究を行った。標準化された電子健康記録(PEDSnet database、version 4.0)からデータを集め(2009年1月~2020年11月)、小児AAの有病率と罹患率を調べた。 試験コホートには、AA診断コードが記録されている間に少なくとも2回医師の診察を受けていた、またはAAが記録され1回の皮膚科専門医の診察を受けていた18歳未満の患者が含まれた。 主要評価項目は有病率(患者母集団540万9,919例)、罹患率(同289万6,241例)。AAコホートに包含する5,801例の子供を特定し、2,398例(41.3%)が12ヵ月超のフォローアップを受け、罹患率の解析に包含された。 主な結果は以下のとおり。・AAコホート5,801例の平均年齢は9.0(SD 4.5)歳、3,259例(56.2%)は女子で、359例(6.2%)がアジア系、1,094例(18.9%)が黒人種、1,348例(23.2%)がヒスパニック系、2,362例(40.7%)が白人種であった。・全体の小児AA有病率は、0.11%であった。PEDSnet全集団と比べてAAコホートの小児は、年長者、女子、少数人種/民族集団の子供が多かった。・2009~20年の11年全罹患率は、13.6例/10万人年(95%信頼区間[CI]:13.1~14.2)であった。・年齢別に見た罹患率は正規分布が示され、ピークは6歳時に見られた。・罹患率は、男子よりも女子で22.8%高かった(10万人年当たり女子15.1例vs.男子12.3例)。さらにヒスパニック系の子供たちが最も高率だった(10万人年当たり31.5例)。

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バリシチニブ、円形脱毛症の毛髪再生に有効か/NEJM

 円形脱毛症は、頭髪、眉毛、睫毛の急速な脱毛を特徴とする自己免疫疾患であるが、治療法は限定的である。米国・イェール大学医学大学院のBrett King氏らは、重症円形脱毛症の治療におけるヤヌスキナーゼ(JAK)1とJAK2の阻害薬バリシチニブの有用性を検討し、本薬はプラセボと比較して、36週時に臨床的に意義のある毛髪再生を達成した患者の割合が高く、安全性も劣らないことを「BRAVE-AA試験」で示した。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2022年3月26日号で報告された。10ヵ国169施設の2つのプラセボ対照無作為化試験 本研究は、日本を含む10ヵ国169施設が参加した2つの二重盲検プラセボ対照無作為化試験(BRAVE-AA1試験、BRAVE-AA2試験)である(Incyteのライセンスの下でEli Lillyの助成を受けた)。 この試験では、BRAVE-AA1試験の第III相部分(参加者登録期間:2019年3月~2020年6月)とBRAVE-AA2試験(同:2019年7月~2020年5月)のデータが用いられた。 対象は、年齢18~60歳の男性と18~70歳の女性で、Severity of Alopecia Tool(SALT)のスコア(0[頭髪の脱毛なし]~100[頭髪の完全脱毛]点)が50点以上の患者であった。 被験者は、バリシチニブ4mg、同2mg、プラセボを、1日1回、経口投与する群に、3対2対2の割合で無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、36週の時点におけるSALTスコア20点以下(意義のある治療アウトカム)の達成であった。より長期の試験が必要 1,200例が解析に含まれた。内訳は、BRAVE-AA1試験が654例(バリシチニブ4mg群281例、同2mg群184例、プラセボ群189例)、BRAVE-AA2試験は546例(234例、156例、156例)であった。 円形脱毛症の平均(±SD)罹患期間は、BRAVE-AA1試験が3.6±3.9年、BRAVE-AA2試験は4.3±4.9年だった。全体の53.2%が超重症(SALTスコア95~100点)の円形脱毛症で、90.6%が少なくとも1回の円形脱毛症の治療歴を有していた。また、主要および副次アウトカムのデータには、約10~15%の欠測が認められたため、多重代入法による解析が行われた。 36週時のSALT 20点以下の達成割合は、BRAVE-AA1試験ではバリシチニブ4mg群が38.8%、同2mg群が22.8%、プラセボ群は6.2%で、BRAVE-AA2試験では、それぞれ35.9%、19.4%、3.3%であった。 BRAVE-AA1試験では、バリシチニブ4mg群とプラセボ群の差は32.6ポイント(95%信頼区間[CI]:25.6~39.5)、バリシチニブ2mg群とプラセボ群の差は16.6ポイント(9.5~23.8)であり(プラセボ群との比較で2つの用量ともp<0.001)、BRAVE-AA2試験では、それぞれ32.6ポイント(25.6~39.6)および16.1ポイント(9.1~23.2)であった(プラセボ群との比較で2つの用量ともp<0.001)。 10項目の主な副次アウトカムは、全般的にバリシチニブ4mg群ではプラセボ群よりも良好であった(BRAVE-AA1試験は10項目すべて、BRAVE-AA2試験は7項目で有意差あり)が、同2mg群ではとくにBRAVE-AA2試験でプラセボ群との差がない項目が多かった(BRAVE-AA1試験は8項目、BRAVE-AA2試験は1項目で有意差あり)。 治療期間中に発現または悪化した有害事象は、BRAVE-AA1試験ではバリシチニブ4mg群59.6%、同2mg群50.8%、プラセボ群51.3%に認められ、BRAVE-AA2試験ではそれぞれ66.1%、68.4%、63.0%でみられた。重篤な有害事象は、BRAVE-AA1試験でバリシチニブ4mg群2.1%、同2mg群2.2%、プラセボ群1.6%、BRAVE-AA2試験ではそれぞれ3.4%、2.6%、1.9%で発現した。死亡例はなかった。 プラセボ群に比べバリシチニブ群で頻度の高い有害事象として、ざ瘡(BRAVE-AA1試験:バリシチニブ4mg群5.7%、同2mg群5.5%、プラセボ群0.5%、BRAVE-AA2試験:4.7%、5.8%、1.9%)、クレアチンキナーゼ値上昇(5.7%、1.6%、1.6% / 3.0%、0%、1.3%)、LDLコレステロール値≧130mg/dL(27.7%、20.5%、14.4% / 30.3%、24.8%、17.7%)、HDLコレステロール値≧60mg/dL(41.7%、42.3%、13.5% / 43.0%、35.6%、13.3%)が認められた。 著者は、「円形脱毛症に対するバリシチニブの安全性と有効性を確立するには、より長期の試験が必要である。本試験は、有害事象の長期的な観察が求められたため継続試験が進行中であり、最長で200週まで盲検下に継続する予定である」としている。

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COVID-19患者の脱毛症、特徴が明らかに

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)との関連が報告されている脱毛症患者について、米国・マイアミ大学のBetty Nguyen氏らが系統的レビューとメタ解析を実施。男性型脱毛症は、重症新型コロナウイルス感染症のリスク因子である可能性が認められ、一方で休止期脱毛症は新型コロナウイルス感染症の後遺症としての出現が認められること、また円形脱毛症は概して、円形脱毛症既往患者に再発として認められることを報告した。新型コロナウイルス感染症は男性型脱毛症、休止期脱毛症、円形脱毛症と関連することが示されているが、これまで包括的なデータ分析は行われていなかった。JAAD International誌オンライン版2022年2月22日号掲載の報告。休止期脱毛症はコロナ後遺症として出現 研究グループは、システマティックレビューとメタ解析にて、新型コロナウイルス感染症関連の脱毛症のタイプ、発生率、時期および臨床アウトカムの特徴付けを行った。PubMed/MEDLINE、Scopus、Embaseにて、“脱毛症(alopecia)”または“髪(hair)”およびCOVID-19の検索単語を用いて、2019年11月~2021年8月に発表された論文を検索した。 新型コロナウイルス感染症と脱毛症におけるメタ解析の主な結果は以下のとおり。・新型コロナウイルス感染症を有した脱毛症患者について描出した41の原著論文を特定した。・レビューには、新型コロナウイルス感染症を有した脱毛症患者1,826例(平均年齢54.5歳、男性54.3%)を包含した。・最も一般的にみられた脱毛症のタイプは、男性型脱毛症(全体の30.7%、男性では86.4%)、休止期脱毛症(19.8%、男性では19.3%)、円形脱毛症(7.8%、男性では40.0%)であった。・男性型脱毛症を呈したコロナ陽性患者全員が、男性型脱毛症既往であり(100%)、男性型脱毛症は、新型コロナウイルス感染症に先んじて認められた。・休止期脱毛症を呈したコロナ陽性患者は、概して休止期脱毛症は非既往で(93.6%)、休止期脱毛症は新型コロナウイルス感染症によって新たに引き起こされたものであった。・円形脱毛症を呈した新型コロナウイルス陽性患者は、ほとんどが円形脱毛症既往で(95.1%)、円形脱毛症は概して円形脱毛症既往の患者で発生が認められるものであった。

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試験継続率向上に、クリスマスカード送付は有効?/BMJ

 無作為化比較試験の参加者へクリスマスカードを送っても、試験継続率は増加しなかったが、複数の無作為化比較試験内で同時に研究を行うstudy within a trial(SWAT)の実施は可能であることが示唆された。英国・ヨーク大学のElizabeth Coleman氏らが、幅広い領域の8つの主試験で同時に実施した“無作為化SWAT”の結果を報告した。多くの試験継続戦略が有効性のエビデンスなく使用されていることを受けて、著者は「研究の無駄を避け有効な戦略を確認するため、エビデンスに基づく戦略の評価が必要だ」と今回の検討の意義を述べている。BMJ誌2021年12月14日号クリスマス特集号の「TRADING PLACES」より。8つの無作為化試験で、参加者をクリスマスカード送付群と非送付群に無作為化 研究グループは、整形外科、消化器外科、泌尿器科、歯科、禁煙などさまざまな領域の無作為化試験8件において、これら主試験の参加者を、クリスマスカード送付群と非送付群に1対1の割合で無作為に割り付けた(各主試験が個別に割り付けを実施し、参加者は盲検化された)。 8試験は、「腹腔鏡下胆嚢摘出術と観察/保存的管理の比較」「妊娠中の禁煙支援に関するインセンティブの比較」「デュピュイトラン拘縮に対するコラゲナーゼ注射と手術の比較」「難治性膀胱症状を有する女性の管理における包括的臨床検査と侵襲的な尿流動態検査併用との比較」「65歳以上の上腕骨近位部骨折患者における3種類の手術の比較」「腎下極結石に対する経皮的腎砕石術、体外衝撃波結石破砕術および軟性尿管鏡下レーザー砕石術の比較」「高リスク高齢者における虫歯の予防・治療のためのフッ素入り歯磨き粉処方と通常ケアの比較」「術後創の二次治癒に対する陰圧閉鎖療法とドレッシングの比較」。 主要評価項目は、主試験における次回の追跡調査を完了した参加者の割合(試験継続率)、副次評価項目は追跡調査完了までの期間、カード送付1枚当たりの介入費用(人件費、印刷・郵送費など)とした。 2019年12月に、主試験8件において計3,223例が無作為化され、2020年3月31日までに追跡調査が行われた1,469例が解析対象となった。当初、試験期間は2020年12月までであったが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行のため早期中止となった。クリスマスカード送付、試験継続戦略としての効果は認められず 解析対象1,469例の患者背景は、年齢16~94歳、女性が70%(1,033例)、白人が96%であった。 試験継続率は、主試験ごとの個別解析および統合解析のいずれにおいても、クリスマスカード送付群と非送付群で差は認められなかった。統合解析での試験継続率は、送付群85.3%(639/749例)、非送付群85.4%(615/720例)、オッズ比[OR]は0.96(95%信頼区間[CI]:0.71~1.29、p=0.77)であった。 クリスマスカード受領後30日以内に追跡調査がある参加者を比較した場合でも、両群間で差はなかった(OR:0.96、95%CI:0.42~2.21)。追跡調査完了までの期間も、群間差は確認されなかった(ハザード比[HR]:1.01、95%CI:0.91~1.13、p=0.80)。これらは、事後感度解析でも同様の結果が得られた。 介入費用は参加者1例当たり0.76ポンド(0.91ユーロ、1.02ドル)、カーボンフットプリントではカード1枚当たり約140gのCO2(二酸化炭素)排出量に相当した。

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円形脱毛症患者、網膜疾患リスクが3.1倍

 円形脱毛症(AA)患者は網膜疾患リスクが高いことが、台湾・国立陽明交通大学のHui-Chu Ting氏らによる検討で示された。AA患者では網膜構造の異常を認めるエビデンスが増えていたが、AAと網膜症との関連は明らかになっていなかった。 研究グループは、今回の研究はレトロスペクティブなものであり、台湾住民のみを対象としていることから他の人口集団に該当するかは不明である、としながらも、「AAと網膜疾患の病態生理を明らかにするため、さらなる研究が必要である」と述べている。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2021年11月1日号掲載の報告。 研究グループは、台湾の全民健康保険研究データベースを用いて、AAと網膜疾患の関連を調べた。9,909例のAA患者と、その適合対照として9万9,090例を特定し、網膜疾患リスクについて評価した。すべての解析は、Cox回帰モデルを用いて行った。 主な結果は以下のとおり。・対照群と比較して、AA患者の網膜疾患に関する補正後ハザード比(aHR)は3.10(95%信頼区間[CI]:2.26~4.26)であった。・AA患者において対照群よりも有意に発症リスクが高い網膜疾患は、網膜剥離(aHR:3.98、95%CI:2.00~7.95)、網膜血管閉塞症(2.45、1.22~4.92)、網膜症(3.24、2.19~4.81)であった。

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円形脱毛症と認知症リスク~コホート研究

 円形脱毛症は、さまざまな併存疾患と関連しており、認知症と同様の徴候が認められる疾患である。また、円形脱毛症による心理社会的なマイナスの影響は、認知症のリスク因子である社会との関与の低下につながる可能性がある。しかし、円形脱毛症と認知症との関連は、これまであまり知られていなかった。台湾・台北栄民総医院のCheng-Yuan Li氏らは、円形脱毛症と認知症リスクとの関連を調査するため、コホート研究を実施した。The Journal of Clinical Psychiatry誌2021年10月26日号の報告。 1998~2011年の台湾全民健康保険データベースより、45歳以上の円形脱毛症(ICD-9診断コード:704.01)患者2,534例および、年齢、性別、居住地、収入、認知症関連併存疾患、全身性ステロイド薬の使用、毎年の外来通院でマッチさせた対照群2万5,340例を抽出し、2013年までの認知症発症状況を調査した。潜在的な交絡因子で調整した後、マッチさせた各ペアの層別Cox回帰分析を用いて、円形脱毛症患者と対照群の認知症リスクを評価した。 主な結果は以下のとおり。・円形脱毛症患者は、対照群と比較し、すべての認知症(調整ハザード比[aHR]:3.24、95%信頼区間[CI]:2.14~4.90)、アルツハイマー病(aHR:4.34、95%CI:1.45~12.97)、不特定の認知症(aHR:3.36、95%CI:2.06~5.48)の発症リスクが高かった。・年齢と性別による層別分析では、65歳未満および65歳以上、男性および女性のいずれにおいても、すべての認知症および不特定の認知症リスクが高く、男性においてはアルツハイマー病リスクおよび65歳以上での発症リスクの増加が認められた。・観察開始後最初の1年または3年を除外した感度分析においても、一貫した結果が示された。 著者らは「円形脱毛症患者は、認知症発症リスクが高いことが示唆された。円形脱毛症と認知症リスクとの間にある根本的な病態生理を解明するためには、さらなる研究が必要である」としている。

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機械学習でアトピー性皮膚炎患者を層別化

 アトピー性皮膚炎(AD)の治療を巡って、近年の治療薬の開発に伴い、対象患者の層別化の重要性が指摘されている。そうした中、ドイツ・ボン大学病院のLaura Maintz氏らはAD重症度と関連する主要因子を明らかにするため、同病院入院・外来患者367例について機械学習ベースの表現型同定(deep phenotyping)解析を行い、アトピースティグマと重症ADとの関連性や、12~21歳と52歳以上で重症ADが多くなる可能性などを明らかにした。 ADは、ごくありふれた慢性の炎症性皮膚疾患であるが、表現型は非常に多様で起因の病態生理は複雑である。著者は、「今回の検討で判明した関連性は、疾患への理解を深め、特定の患者に注視したモニタリングを可能とし、個別予防・治療に寄与するものと思われる」と述べている。JAMA Dermatology誌オンライン版2021年11月10日号掲載の報告。 研究グループは、思春期および成人ADの重症度関連因子の表現型を深める検討として、2016年11月~2020年2月に前向き追跡試験に登録されたボン大学病院皮膚科の入院・外来患者を対象に断面データ解析を行った。 被験者を、Eczema Area and Severity Index(EASI)を用いて重症度別にグループに分け、AD重症度と関連する130の因子について、相互検証ベースの同調機能を有する機械学習勾配ブースティング法と多項ロジスティック回帰法で解析した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象は、367例(男性157例[42.8%]、平均年齢39歳[SD 17]、成人94%)。うち177例(48.2%)が軽症(EASI:≦7)、120例(32.7%)が中等症(EASI:>7~≦21)、70例(19.1%)が重症(EASI:>21)であった。・アトピースティグマは、重症ADと関連する可能性が高かった(口唇炎のオッズ比[OR]:8.10[95%信頼区間[CI]:3.35~10.59]、白色皮膚描画症:4.42[1.68~11.64]、ヘルトーゲ徴候:2.75[1.27~5.93]、乳頭湿疹:4.97[1.56~15.78])。・女性は、重症ADと関連する可能性が低かった(OR:0.30、95%CI:0.13~0.66)。・総血清免疫グロブリンE値1,708IU/mL超、好酸球値6.8%超は、重症ADと関連する可能性が高かった。・12~21歳または52歳以上の患者は、重症ADと関連する可能性が高く、22~51歳の患者は軽症ADと関連する可能性が高かった。・AD発症年齢が12歳超では30歳をピークに重症ADと関連する可能性が高く、AD発症年齢が33歳超では中等症~重症ADと関連する可能性が高く、小児期の発症では7歳をピークに軽症ADと関連する可能性が高かった。・重症ADと関連するライフスタイル要因は、身体活動が週に1回未満と、(元)喫煙者であった。・円形脱毛症は、中等症AD(OR:5.23、95%CI:1.53~17.88)、重症AD(4.67、1.01~21.56)と関連していた。・機械学習勾配ブースティング法と多項ロジスティック回帰法の予測能は僅差であった(それぞれの平均マルチクラスAUC値:0.71[95%CI:0.69~0.72]vs.0.68[0.66~0.70])。

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円形脱毛症リスク、地毛の色で有意差

 円形脱毛症と地毛の色には有意な関連がみられ、より暗い色(黒髪や暗褐色の髪)のほうが有意にリスクが高い。米国・ウェストバージニア大学のAhmed Yousaf氏らが、英国の白人種男女を対象とした適合ケースコントロール試験の結果を報告した。円形脱毛症は、複合的な免疫異常によって非瘢痕性脱毛を引き起こすとされている。 先行研究では、病変部における白髪を形成する毛包の色素細胞、非色素細胞を標的とした報告がされ、メラノサイトおよびケラチノサイトにおけるメラニン形成に関連したタンパク質の免疫標的化が、円形脱毛症の成長期の毛髪を標的とする炎症のメカニズムを表すものと示唆されていた。著者は、「われわれの結果はそうしたモデルを支持するものである。ただし、円形脱毛症と髪の色の免疫原性の関連性をより正確に解き明かすには、さらなる研究が必要だ」と述べている。JAMA Dermatology誌オンライン版2021年3月10日号掲載の報告。 研究グループは2020年10月に、英国居住の白人種における円形脱毛症と髪の色の関連を調べる適合ケースコントロール試験を行った。試験には、前向きに収集された大規模コホートが用いられ、UK Biobank(成人の表現型および遺伝子型の決定因子を研究するためにデザインされた大規模前向きリソース)から集めたデータを包含した。 UK Biobankの被験者計50万2,510例をレビューし、髪の色が報告されていた円形脱毛症1,673例(ケース群)を抽出し、1対4のマッチング法を用いて年齢と性別で適合した非円形脱毛症6,692例(対照群)と比較検証した。 アウトカム変数は円形脱毛症、主な予測因子を白髪になる前の地毛の色として、条件付きロジスティック回帰分析にて評価した。考慮した変数は糖尿病、甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症、白斑などであった。 主な結果は以下のとおり。・被験者46万4,353例において、25万4,505例(54.8%)が女性であった。・円形脱毛症を呈した被験者の平均年齢(SD)は46.9(16.5)歳であった。・円形脱毛症は、薄茶色の髪の被験者と比較して、黒髪(補正後オッズ比[aOR]:2.97、95%信頼区間[CI]:2.38~3.71)、暗褐色(1.26、1.11~1.42)の被験者で有意に多く認められた。・対照的に、金髪の被験者では、薄茶色の髪の被験者と比較して、円形脱毛症が有意に少なかった(aOR:0.69、95%CI:0.56~0.85)。・赤毛の被験者と薄茶色の髪の被験者に、有意差はみられなかった。

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Long-COVID:専門医が語る新型コロナ後遺症の実態

 国立国際医療研究センターの研究チームが、COVID-19回復者を追跡調査し、後遺症に焦点を当てた論文が10月に発表された(新型コロナ後遺症、4ヵ月後も続く例や遅発性の脱毛例も/国際医療研究センター)。それによると、発症から120日超の時点でも依然続く呼吸苦や倦怠感、咳などを訴えたり、数ヵ月後になって脱毛を経験したりした人がいたことがわかった。国内においては、COVID-19感染者の増加数において3度目のピークを迎えているとみられる昨今。臨床では急性期への対応が間違いなく喫緊の課題だが、感染症専門医らが「きわめて特異的」と評するCOVID-19回復後に長く続く後遺症、いわゆる“Long-COVID”はどのようなものなのか。冒頭論文の責任筆者である森岡 慎一郎氏(国際感染症センター)に話を伺った。倦怠感、呼吸苦、脱毛…回復者外来での多種多様な訴えで新型コロナ後遺症の研究に着手 Long-COVIDという言葉は包括的な概念で、10月ごろに英国から出てきたと記憶している。世界的なトレンドとしては、7月あたりからCOVID-19の後遺症にフォーカスした研究が出始めていた。ただ、先駆けた1~2本目の研究論文では、発症から14日や21日、もしくは60日経過した時点におけるピンポイントの聞き取り調査だった。 一方、われわれの研究のきっかけは、回復者外来で罹患後かなり経過しても症状が続いているという訴えが少なくなかったこと。エボラやデング熱でも一部後遺症はあるが、COVID-19ではどうなのか、正確なデータを客観的に収集しようということになった。 インフルエンザならば、「2週間前は大変だった」という感じで、症状が出ている時期と回復後は大きく異なる。しかしCOVID-19の場合は、症状が長く後を引き、倦怠感や呼吸苦があって仕事に行けないなど日常生活に影響を及ぼす症状が多く、大きな社会的問題にもなりうるので、その点は懸念していた。その中でも、「髪が抜ける」という訴えで来院する患者さんが相当数確認されていた。患者さんの多くは、脱毛がCOVID-19罹患と関係があるとは思っていない様子だった。われわれ医療者側も、当初は脱毛とCOVID-19とがすぐには結び付かなかった。しかし、そういう人が増えてくるにつれて、COVID-19の晩期症状の1つとしてあり得るのではないかという考え方にシフトしていった。そこで、晩期症状としての脱毛を検証しようという方針になった。 新型コロナ後遺症の研究をまとめたのは8月上旬だったが、その時点ではまだCOVID-19の後遺症としての脱毛に焦点を当てた論文はなかった。ところが、査読結果が出た9月中旬時点では、すでに脱毛についてはかなり認知されていて、具体的にどういう症状なのか(円形脱毛症か、AGA型かなど)、どの程度なのかという点まで深堀りしなければ、論文として新規性がないと指摘された。7月下旬の時点ならば世界に先駆けていたのに、わずか1ヵ月半で当たり前になっている。これが世界のCOVID-19を巡る研究のスピードなのかと痛感した。 研究に着手する段階で、これまでのCOVID-19の診療経験から仮説を立ててカプランマイヤーを描き、共同研究者たちにもイメージを共有していたが、おおむね研究前に思い描いていた通りの結果が得られた。ただ、仮説と大きく異なるレベルではないが、研究対象者の24.1%、ほぼ4人に1人という割合で脱毛が見られたのは、個人的には予想以上の頻度であり、驚きであった。また、罹患後120日経っても嗅覚障害を訴える人が10%程度いたのも、長引く後遺症の1つとして注目すべき点である。 今回の新型コロナ後遺症の研究では、120日時点でひとまず調査を打ち切っている1)。そのため、インタビュー時にも継続していた症状が、その後どのくらいの期間続いたのかは不明である。もし、調査を継続していたらカプランマイヤーがどのようなカーブになったのか―。それについては、追加調査でより多くの患者さんの協力を得て、年明け(2021年)以降に開始する予定で、おおむね1年間の追跡期間で、新型コロナの後遺症がどれだけ続くかという観点でより深い調査を実施したいと考えている。「正しく知り、正しく恐れる」森岡医師が提言するLong-COVIDとの付き合い方 COVID-19を巡っては、人によってこれほど多様な症状や期間の後遺症が出てくるという意味で、非常に特異的である。私自身の実感としては、COVID-19は、まさに100年に一度現れるかどうかの社会を揺るがす感染症であり、恐らくほかの医療者たちにも共通した認識だと思う。SARSやMERSのようにほぼすべての感染者が発症する感染症であれば、封じ込めも可能であろう。だが、COVID-19は無症状であるケースも多く、水際で100%防ぎきれない。どれだけ症状を詳しく聞き、発熱に注意したとしても、ウイルス排泄は発症の2日前から始まり、0.8日前にはピークを迎えている。そういう意味で、COVID-19はきわめてたちが悪く、感染対策という点で対応しづらいウイルスであることを実感している。 開業医の先生方は今後、新型コロナの後遺症フォローという観点でいかに急性期病院と連携し、ケアを進めるかというフェーズが重要になってくると思われる。まずは患者さんの話をよく聞いていただき、そういう症状や後遺症もあるということを認めてあげるというのが大事なポイントになってくる。当初は、われわれも回復者外来で患者さんが訴える症状について、「気のせいではないか」という受け止めだった。具体的には、COVID-19回復後のうつ症状や記銘力低下、無気力などだが、さまざまな知見の蓄積により、徐々にそれらがLONG-COVID-19の概念として認知されつつある。 また、新型コロナに罹患した方は、経済的、社会的、家庭的にかなり追い込まれている。そこに加えて後遺症が重なると、最悪のケースとして自殺も懸念される。そうしたことも踏まえ、まずは「大変でしたね」と患者さんを受容することは非常に重要である。 メディアなどでは、元気だった人がCOVID-19感染や後遺症によって何もできなくなったという極端なケースが象徴的に報じられることがある。いたずらに恐怖を煽るようなニュース番組も散見されるので、実際に新型コロナに罹患したどのくらいの人が、どの程度、どんな後遺症がどのくらいの期間続くのかという客観的データを収集し、エビデンスに基づいた情報提供をすることがわれわれの使命だと思っている。医療者側も患者側も、「正しく知り、正しく恐れる」ことが非常に重要。患者さんがメディアの情報などに惑わされ過度に恐れている場合には、客観的なデータを示し、できる限り不安を取り除いていただきたい。

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アトピーのそう痒、nemolizumab+外用薬で改善/NEJM

 アトピー性皮膚炎の治療において、nemolizumabと外用薬の併用は、プラセボと外用薬の併用に比べそう痒が大幅に減少し、湿疹面積・重症度指数(EASI)スコアや皮膚科学的生活の質指数(DLQI)も良好であるが、注射部位反応の発現率はnemolizumabで高いことが、京都大学の椛島 健治氏らが実施した「Nemolizumab-JP01試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2020年7月9日号に掲載された。nemolizumabは、アトピー性皮膚炎のそう痒と炎症に関与するインターロイキン(IL)-31受容体Aのヒト化モノクローナル抗体であり、投与は皮下注射で行われる。本薬は、第II相試験でアトピー性皮膚炎の重症度を軽減すると報告されている。そう痒の低減効果を評価する日本の無作為化第III相試験 本研究は、アトピー性皮膚炎と中等度~重度のそう痒がみられ、外用薬に対する反応が不十分な日本人患者を対象とする16週間の二重盲検無作為化第III相試験で、2017年10月に開始され、2019年2月にデータ解析が行われた(マルホの助成による)。 被験者は、外用薬併用下に、nemolizumab(60mg)を4週ごとに16週まで皮下投与する群、またはプラセボを投与する群に2対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは,そう痒の視覚アナログ尺度(VAS)のスコア(0~100点、点数が高いほどそう痒が重度)のベースラインから16週目までの平均変化率とした。 副次エンドポイントは、4週目までのそう痒VASスコアの変化率の推移、EASIスコア(0~72点、点数が高いほど重症)の変化率、DLQIスコア(0~30点、点数が高いほど日常生活への影響が大きい)が4点以下の患者の割合、不眠重症度指数(ISI)スコア(0~28点、点数が高いほど重症)が7点以下の患者の割合、および安全性などであった。有害事象の頻度は同じ、多くが軽度~中等度 215例が登録され、nemolizumab群に143例(年齢中央値39.0歳[範囲:13~73]、男性65%)、プラセボ群には72例(40.5歳[13~80]、67%)が割り付けられた。ベースラインのそう痒VASスコアの中央値は75.4点、EASIスコア中央値は23.2点であった。全例が事前に外用薬の投与を受けており、88%は経口抗ヒスタミン薬を投与されていた。 16週の時点で、そう痒VASスコアのベースラインからの最小二乗平均の変化率は、nemolizumab群が-42.8%と、プラセボ群の-21.4%に比べ有意に改善された(群間差:-21.5ポイント、95%信頼区間[CI]:-30.2~-12.7、p<0.001)。また、4週までのそう痒VASスコアの平均変化率は、nemolizumab群が−34.4%であり、プラセボ群の−15.3%に比し良好であった(-19.3ポイント、-26.6~-11.9)。 16週までのEASIスコアの平均変化率(nemolizumab群:-45.9% vs.プラセボ群:-33.2%、群間差:-12.6%、95%CI:-24.0~-1.3)、16週時にDLQIスコア≦4点の患者の割合(40% vs.22%、17%、2~31)、16週までにDLQIスコアが4点以上低下した患者の割合(67% vs.50%、17%、3~31)、16週時にISIスコア≦7点の患者の割合(55% vs.21%、33%、17~48)も、nemolizumab群で優れた。 有害事象は、両群とも71%で発生した。ほとんどが軽度~中等度で、重度の有害事象はnemolizumab群で3例(メニエール病、急性膵炎、アトピー性皮膚炎)に認められた。薬剤の投与中止の原因となった治療関連有害事象は、nemolizumab群の3例で4件(アトピー性皮膚炎、メニエール病/円形脱毛症、末梢性浮腫)発現した。 最も頻度の高いとくに注目すべき有害事象はアトピー性皮膚炎の増悪で、nemolizumab群で24%、プラセボ群では21%に発現した。注射関連反応の発現率は、nemolizumab群が8%で、プラセボ群の3%よりも高かった。 著者は、「本試験では、16週以降のnemolizumabの効果の持続性と安全性は検討しておらず、これら課題を明らかにするためには、より長期で大規模な試験を行う必要がある」としている。

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